<この記事を読んでわかること>
・右脳の脳梗塞にはどのような特徴があるか。
・左脳の脳梗塞にはどのような特徴があるか。
・失語症に対してはどのようなアプローチがなされるか。
脳梗塞が右大脳半球で起こるか、左大脳半球で起こるかによって、麻痺以外の症状に違いが生まれることがあります。
例えば、右大脳半球の脳梗塞では、半側空間無視という症状が、左大脳半球の脳梗塞では、失語症という言語障害が起こりえます。
この記事では、これらの右脳と左脳の脳梗塞の違いについて、リハビリの面からも詳しく解説します。
右脳梗塞後の麻痺とリハビリのポイント
脳梗塞は、脳の血管が詰まってしまい、その先の脳細胞に血液が送られなくなる病気のことです。
脳は、左右の大脳半球によって成り立っています。それぞれ、左半分を左半球もしくは左脳、右半分を右半球もしくは右脳といいます。
右脳の機能と左脳の機能には違いがありますので、右脳梗塞と左脳梗塞の麻痺やリハビリのポイントも異なってきます。
右脳梗塞では、左半身麻痺、つまり半身不随になることがあります。
そのため、発症後、できるだけ早い段階からリハビリを開始することが大切です。
筋力トレーニングで麻痺した筋肉を強化し、運動療法で日常生活動作の訓練や歩行練習を行います。
右脳が損傷を受けると、空間認知機能にも影響を及ぼすことがあります。
右頭頂葉が脳梗塞で障害を受けると左側の空間を無視してしまう、半側空間無視という症状がでることがあります。
この症状に対して、左側へ注意を促し、意識的に無視してる方向を向くようにする認知リハビリテーションなどが行われます。
左脳梗塞後のリハビリとその特徴
左脳梗塞では、右半身の麻痺をきたすことがあります。
また、左前頭葉や左側頭葉には言葉を話したり、理解するといった言語機能を司るという役割を持つ、言語中枢(げんごちゅうすう)があります。
この言語中枢は、右利きの人の95%、左利きの人で68%程度が左脳半球にあるといわれています。
そのため、この部位で脳梗塞が起こると、言葉がうまく話せない、理解できない、という失語の症状が現れます。
失語症の症状は様々であり、言葉が滑らかに発せられるのにもかかわらず、理解ができないタイプや、逆に言葉は流暢に出せないけれども理解は良好である、というタイプなどもあります。
そのため、左脳梗塞後のリハビリでは、麻痺やろれつが回らないという症状の他に、こうした言語障害にも注意する必要があります。
脳梗塞の後遺症としての言語障害とその対応
脳梗塞の後遺症としての言語障害として重要なものには、失語症があります。
失語症は、生まれてきてから一旦獲得された言語機能が、大脳の言語を司る領域の病変によって障害を受けた状態を指します。
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血を含む脳卒中の後の失語症は、発症してから数ヶ月の間にかなり自然回復することが期待できます。
失語症に対しての言語障害の治療としては、言語聴覚療法が行われます。この治療の目的は、それぞれの患者さんのコミュニケーション能力を、残っている能力の中で最大限に改善させ、QOL(生活の質)を上げることです。
大切なことは、失語症の程度がどのくらいなのかを良く観察し、訓練のレベルや効果を判定していくという点です。
失語症が軽いレベルであれば、社会復帰を目指して社会生活に必要な場面を想定した会話訓練を行います。
一方、失語症のレベルが重く言語機能がほぼ失われていても、状況判断などができるような場合には、ジェスチャーや表情、社会的ルールなどの非言語性コミュニケーションの主義を生かして、日常生活の自立と向上を目指します。そして同時に、社会適応の支援なども行っていきます。
まとめ
脳はその部位によってさまざまな役割を持っています。
脳梗塞によって損傷を受けた脳神経細胞は、完全には修復しないとされてきましたが、最近では再生医療によって傷ついた神経細胞を回復させることが期待されています。
当クリニックでは、『神経障害は治る、を当たり前にする取り組み』であるニューロテック®に取り組んでいます。
さらに、脳卒中や脊髄損傷、神経障害の患者さんに対する『脳の治る力を高める治療』を、リニューロ®として、さまざまな手法を取り入れてきています。
リニューロ®は、同時刺激×再生医療、骨髄由来間葉系幹細胞、神経再生リハビリによって『脳の治る力を高める治療』です。
脳梗塞後の麻痺や空間認識障害、言語障害などの再生医療にご興味がある方は、ぜひ一度当クリニックまでご相談ください。
Q&A
- 右片麻痺と左片麻痺の違いは何ですか?
- 大脳半球には右大脳半球と左大脳半球の機能や役割には違いがありますので、自ずと右片麻痺と左片麻痺に付随する障害が異なってきます。右片麻痺の場合は失語症、左片麻痺の場合には左空間の無視が起こることが例として挙げられます。
- 麻痺側を下にしてはいけない理由は何ですか?
- 脳卒中などで麻痺した側を下にすると、循環障害が起こりやすくなり、さらなる麻痺や褥瘡(じょくそう:床ずれのこと)が発生する可能性が高まります。また、麻痺した側を下にすると、力が入りにくいために体を支えにくく、転倒などに繋がるおそれもあるため、麻痺側は上にすると良いでしょう。
<参照元>脳卒中治療ガイドライン2021 p279-283:https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2023.pdf
半側空間無視.高次脳機能研究.2008;28(2):214-223.:https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/28/2/28_2_214/_pdf
2 失語症の機能回復と言語治療.Jpn J Rehabil Med.2016;53(4):273-279. p274:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/53/4/53_273/_pdf