＜この記事を読んでわかること＞
・脊髄出血の病態がわかる
・脊髄出血の後遺症に対する管理がわかる
・脊髄出血からの社会復帰へのプロセスがわかる
脊髄出血は脊髄への血流が低下することで麻痺やしびれなど、さまざまな神経学的後遺症を残す病気です。
後遺症は移動や体位変換、排泄など多くの日常生活はもちろんのこと、社会復帰の妨げにもなるため、適切な管理と対策が求められます。
そこでこの記事では、脊髄出血後の後遺症管理と社会復帰への道について解説します。
脊髄出血後の感覚障害や運動麻痺への対応とリハビリ戦略
脊髄出血とはその名の通り、脊髄を栄養する血管が破綻して脊髄への血流が途絶する病気です。
脊髄は脳からの運動の指令を身体に、身体からの痛みや温度などの感覚を脳に伝達する架け橋のような臓器であるため、この脊髄に異常をきたすと運動麻痺や感覚障害が出現します。
また脊髄を構成する神経細胞は自己再生能に乏しく、一度損傷すると基本的に再生しないため、麻痺やしびれなどの症状が後遺症として残ってしまいます。
そこで、失われた機能を元に戻すためにはリハビリテーションが必要であり、できるだけ早期からリハビリテーションに取り組むことが重要です。
以前までは、急性期は原因疾患の病状が不安定であることから積極的なリハビリは控えられていましたが、長期の安静は筋肉の萎縮や関節の拘縮など、さまざまな廃用を進めてしまうことから、急性期からも積極的なリハビリが推奨されています。
また、脊髄出血の場合、障害を受けた脊髄の高位によって出現する症状も異なるため、障害部位の特定と神経症状の確認が肝要です。
例えば、腰髄が障害を受けた場合は下肢麻痺が出現しますが、頸髄からの指令を受けて動く上肢の運動は保たれます。
一方で、頸髄が損傷した場合は上肢も下肢も麻痺が出現し、最悪の場合呼吸筋も麻痺するため、注意が必要です。
実際のリハビリ戦略としては、下記のようなリハビリが行われます。
- 呼吸訓練：呼吸能力低下した患者の呼吸補助筋の筋力維持・向上
- 関節可動域訓練：関節の拘縮予防
- 体位変換訓練：褥瘡形成予防
- 電気刺激訓練：感覚障害に対する機器を用いたトレーニング
- 触覚トレーニング：異なる大きさや質量のものを触ることで触覚をトレーニング 上記のようなリハビリを患者の症状に合わせて組み合わせ、個々に最適化されたメニューを継続的に行なっていくことが肝要です。
- 介護保険を用いて自宅や施設でのリハビリ
- 就労復帰のための支援や訓練を行う地域障害者職業センターの利用
- 就労や日常生活の支援を行う障害者就業・生活支援センターの利用
- 職業相談や職業案内を行うハローワーク（公共職業安定所）の利用
- 運動麻痺は治るのか？
- 運動麻痺は原因によっては治る可能性もあります。
末梢の神経障害や一時的な血流障害が原因の場合は、治療によって原因を解除することで改善が目指せます。
一方で、脊髄損傷や脳卒中の場合は改善が困難な可能性があります。 - リハビリにおける感覚障害とは？
- リハビリにおける感覚障害とは、なんらかの原因で感覚神経が障害され、知覚鈍麻や感覚異常、感覚過敏などが挙げられます。
痺れや痛み、触ったものの識別能力の低下など、日常生活に与える影響は少なくありません。
排尿・排便機能障害の管理と生活への適応方法
脊髄出血で厄介な点は麻痺やしびれだけでなく、仙髄を経由して伝達される排尿や排便の機能も障害される点です。
その結果、尿失禁や便失禁、膀胱炎や腎盂腎炎などさまざまな合併症を招きかねないため、これらの合併症予防のためには排尿・排便の適切な管理が求められます。
排尿の管理においては、膀胱内圧を低くして残尿量を少なくすることが重要です。
腹壁徒手圧迫法（お腹を手で押して尿を出す手法）などの膀胱訓練を行い、それが困難な場合は無欠的間欠導尿による尿排出を行います。
また、排便においては便秘が問題になることが多いため、お腹のマッサージや圧迫、ウォシュレットによる肛門刺激、指による直腸刺激や摘便など、さまざまな方法で排便を促します。
また、排便や排尿は麻痺の程度によっては介助が必要となり、最悪の場合はベッド上トイレや車椅子トイレなどなど、特殊なトイレが必要です。
社会復帰を目指すためのサポート体制とリソースの活用法
脊髄出血によって後遺症を負った場合、下記のようなさまざまな社会福祉やリソースを用いて社会復帰を目指します。
上記の他にもさまざまな福祉サービスが提供されているため、ぜひ利用を検討してみると良いでしょう。
まとめ
今回の記事では、脊髄出血後の後遺症管理と社会復帰への道について詳しく解説しました。
脊髄出血は一度発症すると、麻痺やしびれなどのさまざまな後遺症が残り、程度によっては日常生活や社会生活に大きな支障を与えます。
現状では重篤な後遺症が残った場合に改善する術はリハビリテーション以外になく、仮にリハビリテーションを行なってもこれらの後遺症を根治することは困難です。
一方で、近年では脊髄出血の後遺症に対する新たな治療法として再生医療が大変注目されています。
ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善の困難であった脊髄出血に伴う後遺症の改善が期待できます。
Q&A
＜参照元＞
（1）：脊髄損傷者に対するリハビリテーション｜J STAGE：https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/30/1/30_58/_pdf
（2）：感覚障害へのリハビリテーション｜J STAGE：https://www.jstage.jst.go.jp/article/kochiotjournal/1/0/1_37/_pdf