頸髄損傷への神経機能の回復とその可能性

<この記事を読んでわかること>
・頸髄損傷の概要と主な原因がわかる。
・再生医療と幹細胞治療のメカニズムがわかる。
・再生医療の適応疾患とその効果がわかる。


頸髄損傷は首の脊髄損傷による重大な障害を引き起こし、運動機能や感覚に影響を与えます。
再生医療の進展により、幹細胞治療が損傷した神経細胞の再生を促進し、脳梗塞やパーキンソン病などの神経変性疾患にも有効です。
今回の記事では、早期介入によるリハビリテーションが回復を促進する点についても解説します。

頸髄損傷の基礎知識とその一般的な原因

それでは、まずは頸髄損傷の基礎知識と一般的な原因について解説していきます。

頸髄損傷とは?

頸髄損傷は、首の部分の脊髄が損傷を受けることで、神経伝達に障害が生じる状態を指します。
この損傷により、運動機能や感覚に大きな影響を与え、場合によっては四肢麻痺や呼吸機能の障害が生じることもあります。

一般的な原因

  • 交通事故: 最も多い原因で、特に高エネルギーの衝突が重大な損傷を引き起こします。
  • スポーツ事故: ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツで頻繁に発生します。
  • 転倒: 特に高齢者に多く見られ、日常生活での転倒が原因となることが多いです。
  • 暴力行為: 銃撃や刺傷など、直接的な物理的攻撃によって頸髄が損傷されることです。

頸髄損傷の症状

  • 運動機能障害: 損傷のレベルに応じて、四肢麻痺や対麻痺などが生じます。
  • 感覚障害: 痛み、温度、触覚の喪失や低下が見られます。
  • 自律神経機能障害: 血圧の調節や体温調節に問題が生じることがあります。

再生医療による頸髄損傷の幹細胞治療

それでは、再生医療による頸髄損傷の幹細胞治療について述べていきましょう。

再生医療の概要

そもそも、再生医療は、失われた組織や臓器を再生する医療技術であり、特に神経損傷に対する治療法として注目されています。
この分野の進展により、損傷した神経細胞の再生が現実のものとなりつつあります。

幹細胞治療のメカニズム

  • 幹細胞の特徴: 幹細胞は多能性を持ち、特定の細胞に分化する能力があります。
    損傷部位に導入されると、新たな神経細胞として成長し、損傷部位の修復を行います。
  • 治療プロセス: 損傷部位への幹細胞移植により、神経伝達路の再構築を促進します。
    さらに、幹細胞は神経栄養因子を分泌し、周囲の神経細胞の生存と成長をサポートします。

期待される効果

  • 運動機能の回復: 幹細胞治療により、筋力と運動制御の改善が期待されます。
    これにより、患者は独立した歩行や日常活動の復帰が可能となることがあります。
  • 感覚機能の回復: 痛みや温度感覚の回復が見込まれ、患者の生活の質が向上します。

神経変性疾患への応用

  • アルツハイマー病: 神経幹細胞は神経ネットワークの修復を促進し、症状の進行を遅らせる可能性があります。
    これは、神経細胞の減少を防ぎ、認知機能の維持に寄与します。
  • パーキンソン病: ドーパミン産生細胞の再生を通じて、運動障害の改善が期待されています。
    これにより、震えや筋肉のこわばりが軽減される可能性があります。

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再生医療による治療の適応疾患

脊髄損傷

幹細胞治療の役割: 損傷部位での神経細胞の再生と、機能回復をサポートします。
幹細胞治療は、損傷部位に導入されると、損傷した神経細胞の代わりとなり、神経伝達を再構築します。

「日本リハビリテーション医学会による脊髄損傷の呼吸リハビリテーションガイドライン」では、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)が患者の生活の質を大きく向上させるとされています。

脳梗塞

アルツハイマー病、レビー小体型認知症などの認知症に対しても、再生医療の効果が期待されています。

神経ネットワークの修復とシナプス機能の改善が期待されます。
これにより、記憶力や判断力の改善が見込まれます。

認知症

アルツハイマー病、レビー小体型認知症などの認知症に対しても、再生医療の効果が期待されています。

神経ネットワークの修復とシナプス機能の改善が期待されます。これにより、記憶力や判断力の改善が見込まれます。

パーキンソン病

ドーパミン産生細胞の再生と、運動機能の改善により、震えや動作の遅れが軽減されることが期待されます。

幹細胞治療の有効性を示す研究が進行中であり、将来的には標準治療の一つとなる可能性があります。

頸髄損傷患者における早期介入の重要性

頸髄損傷患者における早期介入のメリットを解説します。

早期介入のメリット

  • 回復の最大化: 初期段階での治療が回復を大幅に促進します。
    早期に介入することで、損傷の拡大を防ぎ、残存機能を最大限に活用することが可能です。
  • 長期的障害の軽減: 適切な介入により、後遺症を最小限に抑えます。
    これにより、患者の生活の質を大幅に向上させることができます。

リハビリテーションの重要性

  • 理学療法: 筋力強化と関節可動域の改善を目指します。
    特に、筋肉の柔軟性と強度を維持することが重要です。
  • 作業療法: 日常生活動作の回復を支援します。
    これは、患者が自立した生活を送るために不可欠な要素です。

包括的なアプローチ

  • 多職種連携: 医師、理学療法士、作業療法士、看護師などが協力して治療を行います。
    各専門家が連携することで、患者に最適なケアを提供することができます。
  • 個別化プログラム: 患者の状態に応じたオーダーメイドのリハビリ計画を作成します。
    これにより、各患者のニーズに合わせた最適な治療が可能となります。

まとめ

頸髄損傷は重大な健康問題であり、迅速な対応と適切な治療が求められます。
再生医療による幹細胞治療は、神経機能の回復において大きな可能性を秘めています。
また、早期介入によるリハビリテーションは、損傷後の回復を促進し、患者の生活の質を向上させる鍵となります。
さらに、再生医療の進展により、脳梗塞、認知症、パーキンソン病など、他の神経変性疾患に対する治療の可能性も広がっています。
今後の研究と技術の発展により、これらの疾患に対する治療法が一層充実していくことが期待されます。

当院ニューロテックメディカルでも、脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療「リニューロ®」を提供しております。
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頸髄損傷を含め、再生医療についてご興味のある方はぜひ一度当院までご相談ください。

Q&A

再生医療が適応される疾患は?
再生医療は脊髄損傷、脳梗塞、アルツハイマー病、パーキンソン病、心筋梗塞、骨折、軟骨損傷、網膜変性、白血病、再生不良性貧血、肝硬変などに適応され、幹細胞治療で組織や細胞の再生を促進します。
再生医療は危ないですか?
再生医療には感染症リスクや拒絶反応、異常増殖の危険性があります。
しかし、技術の進展と厳格な規制により安全性が向上しています。
再生医療による治療を受ける際には、信頼のおける専門医や医療従事者が在籍している医療機関を受診するようにしましょう。

<参照元>日本リハビリテーション医学会: 「神経筋疾患・脊髄損傷の呼吸リハビリテーションガイドライン」:https://www.jarm.or.jp/wp-content/uploads/file/member/member_publication_isbn9784307750400.pdf
札幌医科大学 神経再生医療科: 「脳梗塞と脊髄損傷の再生治療」:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/suisin/suisin_dai18/siryou6.pdf

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