脳卒中後の内反尖足を改善するためのリハビリ方法

脳卒中後の内反尖足を改善するためのリハビリ方法

<この記事を読んでわかること>
・内反尖足に対するストレッチと筋トレ
・重度片麻痺者に対するリハビリ
・内反尖足の進行を予防する方法


内反尖足とは足部が内側かつ下側に向いてしまう変形のことです。
内反尖足になってしまうことで歩行や立位などの日常生活動作に影響を及ぼします。
リハビリを行うことで内反尖足を改善したり、進行の予防効果が期待できます。
この記事では、内反尖足のリハビリ方法から手順、予防方法について紹介します。

内反尖足に効果的なストレッチと筋力トレーニング

歩行や立位などの日常生活動作

内反尖足とは脳卒中後片麻痺患者でよく見られる足部が下側かつ内側に向いてしまう変形のことをいいます。
内反尖足になってしまうと歩行時の不安定性に繋がったり、立つ際に体重をうまく乗せられないなど日常生活に大きく影響します。
脳卒中後の内反尖足は筋緊張の異常が原因とされています。
筋緊張の異常は痙縮と呼ばれており、神経の問題と筋肉の器質的な問題が複合的に合わさっていると言われています。
脳卒中発症後は運動麻痺によって足部に異常な神経からの命令が伝わり、力が抜けなくなっている状態が続いてしまうと、筋肉自体が固くなっていってしまうようなイメージです。
そのため、内反尖足を改善するためには筋緊張を軽減させるようなストレッチや筋のコントロールを行いやすくする筋力トレーニングが効果的です。

かかと上げ運動

ストレッチは下腿三頭筋と呼ばれるふくらはぎにある筋肉を伸ばすことを目的に行います。
方法は、立っている状態で伸ばしたい足を後ろに引きます。
引いた足の踵を地面につけた状態で前方にある脚の膝を曲げます。
後ろに引いた足のふくらはぎに張っている感覚があれば上手にストレッチを行えています。
この状態を30秒間維持します。
このストレッチを行う際には転倒に十分注意し、手で壁や手すりなどの支えになるものを持ちながら行いましょう。
筋力トレーニングは踵上げがおすすめです。
立っている状態でつま先を中心に体重を乗せ、踵を浮かせます。
踵を浮かせた後、上げられる高さまで上げ、その後ゆっくり踵が地面に着くまで下ろします。
このトレーニングは下腿三頭筋を鍛えることで筋のコントロールが行いやすくなるだけでなく、器質的な硬さの改善も期待することができます。

片麻痺重度の患者に向けたリハビリプログラムのポイント

片麻痺が重度で内反尖足が非常に強く、歩行の障害になっている方に対するリハビリプログラムは上述のストレッチや筋トレに加えて、装具を使用した歩行練習を行います。

装具は短下肢装具の中でも両側金属支柱付き短下肢装具と呼ばれるものを使用します。
両側金属支柱付き短下肢装具とは、痙性が強く内反尖足の修正が自己にて困難な方が適応となる装具です。
足部の関節にはダブルクレンザックという足首の動きを制限する部品もしくはダブルクレンザックとゲートソリューションという前型歩行を行いやすくする装具の組み合わせのどちらかを選択します。
装具の選択に関しては、専門の理学療法士や義肢装具士と相談しながら行います。
また、内反尖足を抑える治療としてボツリヌス療法やショックウェーブ、機能的電気刺激療法(FES)、末梢磁気刺激療法(PMS)などがあります。
ボツリヌス療法とはボツリヌス毒素を痙縮が強い筋肉に注射することで痙縮を改善する治療方法になります。

内反尖足では下腿三頭筋や後脛骨筋などの筋肉に注射を行うことで改善を見込むことができます。
ボツリヌス療法とストレッチや筋トレなどの運動療法を併用することで効果が上がるとされており、治療後もしっかりトレーニングを行うことが重要です。
ショックウェーブとは体外衝撃波と呼ばれる治療方法で、局所に行う方法と全身に行う方法があります。
この治療方法は脳卒中患者における痙縮治療方法としてここ数年で報告が増加している物理療法です。

内反尖足に対しては下腿三頭筋や後脛骨筋に対してショックウェーブを使用することで痙縮を抑制し、症状を改善する効果が期待できます。
内反尖足におけるFESは下腿三頭筋の拮抗筋である前脛骨筋を刺激しながら、実際に運動を行うことで下腿三頭筋の痙縮の改善を行う治療方法です。
拮抗筋である前脛骨筋が促通されることでⅠa抑制と呼ばれる機構が働き、下腿三頭筋の筋緊張を低下させる効果を得ることができます。
また、機能的電気刺激は機器によっては歩行時に使用することができます。
歩行時の下腿三頭筋の痙縮を抑え、前脛骨筋の収縮を促すことで痙縮を抑え、歩行能力の改善効果が報告されています。
PMSとは磁気刺激を筋肉に当てることで筋収縮を促し筋力増強を行なったり、痙縮筋に対して痙縮の改善を目指す物理療法です。
内反尖足に対しては、下腿三頭筋や後脛骨筋に直接当てることで痙縮の改善が期待できます。
また、FESと同様に前脛骨筋にPMSを当てながら収縮を促すことでⅠa抑制を働かせ、内反尖足の改善を促すことができます。
FESとの違いはPMSは機器が大きく、歩行中の使用ができない点があります。
しかし、電気刺激よりも磁気刺激の方が痛みが少なく、導入がしやすいメリットがあります。

このように様々なリハビリテーション方法で内反尖足を軽減することができます。

リハビリで内反尖足の進行を防ぐための工夫とは?

内反尖足は神経の異常による痙縮と動かないことによる筋肉や関節の変性が原因です。
そのため、ベッド上で動かないことが最も内反尖足が進行してしまう原因となります。
リハビリは脳卒中の発症早期から開始され、全身状態を確認しながら車椅子への乗り移りから行います。
血圧などの全身状態が安定していない方はベッド上でのリハビリから開始になりますが、下腿三頭筋のストレッチを行い、内反尖足の予防を行います。
全身状態が落ち着けば麻痺側の下肢に体重を乗せる立位練習や歩行練習を行います。
麻痺側の下肢に体重を乗せることで下腿三頭筋にストレッチがかかり、柔軟性の改善に有効です。
意識障害が重度で歩行練習を行うことが難しい場合は、ベッド上のポジショニングの工夫を行いできるだけ内反尖足の進行を予防します。
ポジショニングは足部が下に向かないようにクッションで調整を行います。
病院を退院した後も、できるだけ活動量の高い生活を送ることが内反尖足の予防に有効です。
器質的な変化に対する予防方法は足関節を動かすことが重要なため、寝たきりにならないようにしましょう。

まとめ

この記事では脳卒中後の内反尖足を改善するためのリハビリ方法について解説しました。
内反尖足に対してはストレッチや筋力トレーニングを行うことで改善効果が期待できます。
片麻痺が重度の方はその方にあったリハビリで内反尖足を抑えながら生活を行うことができます。
リハビリは早期から開始し、積極的に動くことが内反尖足の予防に重要です。
脳卒中で神経を損傷してしまった後の脳の治療は確立されていませんが、再生医療にはその可能性があります。
今後、神経再生医療×リハビリテーションの治療の研究は進んでいきます。
私たちのグループは神経障害は治るを当たり前にする取り組みを『ニューロテック®』と定義しました。
当院では、リハビリテーションによる同時刺激×神経再生医療を行う『リニューロ®』という狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療を行なっていますので、ご興味のある方はぜひ一度ご連絡をお願いします。

Q&A

内反足を放置するとどうなる?
内反尖足を放置してしまうと神経の問題だけでなく、筋肉や関節の変性を引き起こします。
筋肉や関節が変性してしまうことで、足部の拘縮が起こってしまいボツリヌス療法などの療法でも治療が困難になってしまうことがあります。
内反足が治る確率は?
内反尖足が治る確率は治療方法や罹患期間などに違いがあるため、どれくらいの方が改善するかは明らかになっていません。
しかし、ボツリヌス療法などの治療方法は効果が大きいと言われており、内反尖足が強い方には勧められます。

<参照元> 1:脳卒中治療ガイドライン2009:https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_07.pdf
2:痙縮の疫学と治療|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcns/26/12/26_882/_pdf/-char/ja
3:物理療法の最前線|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjeapt/advpub/0/advpub_2023-013/_pdf/-char/ja
4:末梢神経磁気刺激療法|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/59/5/59_59.461/_pdf/-char/ja

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